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民法サブノート第17問94条2項類推適用

第1.設問(1)について

1.AのCに対する所有権(民法(以下略)206条)に基づく妨害排除請求としてのAへの甲土地所有権移転登記請求は認められるか。

(1)要件は①A所有②妨害登記の存在である。

本件において、甲土地はAの所有物であり(①充足)、C名義の登記が存在している(②充足)。

(2)よって、かかる請求は認められるように思われる。

2.これに対してCはBC間売買契約の締結を主張し得るが、Bは甲土地の所有者でなく無権利者であるため、かかる主張は認められない。

 しかし、登記はB名義だったのであり、それを信頼したCが一切保護されないのは取引の安全を害する。そこで、実体に反する登記名義が虚偽であるとして94条2項の適用を考えるが、本件ではAがBに無断でB名義にしたのであり、AB間に「通じてした」(94条1項)といえる関係はない。そのため、1項を前提にする2項は直接適用できない。

 そこで、類推適用できないか。

(1)94条2項の趣旨は、虚偽の外観作出につき、本人に帰責性がある場合に、それを信頼した第三者を保護する点にある。かかる趣旨に鑑みて、①虚偽の外観、②その作出につき本人の帰責性、③第三者の信頼の要件を満たせば類推適用できる。

(2)本件で、所有権はAにあるにもかかわらず、登記はBという実態に合致しない虚偽の概観があったといえる(①充足)。かかる虚偽の外観は、Aが債権者の差し押さえを免れるために作出したもので、なんら合理的な理由はないから、作出につき帰責性があるといえる。

 ③につき、Cは事情を知らなかったから善意であり、Cは登記を有するが、無過失まで要求されるか問題となる。この点、本件本人Aの帰責性は重大であり、加えて文言上無過失は要求されていないことから、無過失は要しないと考える。

(3)以上より、94条2項が類推適用され、AはCに対抗できないため、本件請求は認められない。

第2.設問(2)について

1.請求及び94条2項の反論については設問(1)と同様である。

2.もっとも、本件でAは何も知らないうちにBがAの自宅から甲土地に関する書類やAの実印等を持ち出し、自己へ移転登記を行っている。かかる場合にも設問(1)と同様に94条2項を類推適用できるか。

(1)本件において、本人Aの知らないうちに虚偽の外観が作出された場合には原則として帰責性を問うことができない。また、AはBへの移転登記を承認していないし、その事実を知りながら放置していたといった事情も見当たらない。よって、Aに帰責性が認められない(②不充足)。

(2)したがって、94条2項類推適用は認められず、Cの反論は認められない。

(3)以上より、本件Aの請求は認められる。