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民法サブノート第30問取消しの効果

第1.設問(1)について

1.Aが錯誤(民法(以下略)95条1項)を理由として本件売買契約を取消した場合、本件売買契約は初めから無効であったものとみなされる(121条)。そして、無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けたものは、相手方を現状に復させる義務を負う(121条の2第1項)。

 よって、AはBに対して原状回復義務として本件売買契約に基づいてBから受け取った5万円を返還する義務を負う。一方で、BはAに対して原状回復義務として本件売買契約に基づいてAから引き渡しを受けた甲を返還する義務を負う。ABの返還義務相互間は同時履行の関係に立つ。

第2.設問(2)について

1.Aが行為能力の制限を理由として本件売買契約を取り消した場合、設問(1)と同様に本件売買契約は遡及的に無効となりABは原状回復義務を負う。

2.もっとも、行為能力を理由にした取消の場合、制限行為能力者の原状回復義務の範囲は「現に利益を受けた範囲」に限定される(121条の2第3項後段)。

(1)本件売買契約締結時に成年後見人であったAはBから受け取った5万円を費消しているところ、そのうち3万円はパチンコ等の遊興費として浪費しており現受利益がないから返還義務を負わない。もっとも残り2万円については、生活費として支出しており、受益がなくてもされたと認められる支出にあてられて消滅しているから、Aはその支出を免れたという利益を受けている。したがって、Aはかかる2万円分については返還義務を負う。

(2)以上より、AはBに対し、受け取った5万円のうち2万円分の返還義務を負い、BはAに対し引き渡しを受けた甲を返還する義務を負う。設問(1)と同様にABの返還義務相互間は同時履行の関係に立つ。