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刑法事例演習教材8トランク監禁の悲劇

 

 

第1.甲の罪責

1.甲の、Aの顔面を手拳で数回殴打した行為につき暴行罪(刑法(以下略)208条)が成立しないか。

(1)「暴行」とは人の身体に対する不法な有形力行使をいう。甲は人Aの身体たる顔面を手拳で数回殴打するという不法な有形力行使をしているから「暴行」がある。

(2)故意(38条1項)とは客観的構成要件該当事実の認識認容をいうところ、甲は上記客観的構成要件該当事実を認識しており故意がある。

(3)以上より、上記行為につき暴行罪が成立する。

2.Aを追跡し、乙がAを捕まえて甲と2人でAの身体をつかんで、乙の車のトランク内に無理矢理押し込んだ行為につき監禁致死罪(221条)が成立しないか。

(1)「監禁」とは人の身体を間接的に拘束して身体活動の自由を奪うことをいう。

 本件で甲は乙と共同してAを車のトランク内に無理矢理押し込んで、Aの身体を拘束し、身体活動の自由を奪っているから「監禁」がある。

(2)本件で、A死亡結果が発生している。

(3)もっとも、Aは丙の追突行為という介在事情が存在しているが因果関係が認められるか。

ア.因果関係は条件関係を前提として実行行為の持つ現実的危険性が結果へと現実化した場合に認められる。

イ.本件監禁行為は、Aを車のトランクという通常人が入るべきではない場所に無理矢理押し込み、Aの身体の自由を奪うものであった。かかる行為によってAは振動や圧迫や熱によってデリケートな脳等の臓器を要する頭部に傷害を負う危険性があったといえるし、車に他の車が追突すれば、自己の際には最も損傷を受けるトランク部分に押し込められたAが真っ先に上記のような頭部等に傷害を負う危険性があった。丙の追突行為は前方不注意のために乙の車に追突したものである。確かに、乙が車を停車させた道路は車道の幅員が約7.5メートルと広く、ほぼ直線の見通しの良い道路であったが、片側1車線であり、後方から追突を受ける可能性も考えられた。よって、丙の追突行為は異常とまではいえない。よって、上記実行行為の危険性がA死亡結果へと現実化したといえ、因果関係が認められる。

(4)故意とは上記をいうところ、甲は上記客観的構成要件該当事実につき認識しており故意がある。

(5)以上より、上記行為につき監禁致死罪が成立する。後述の通り乙との共同正犯となる。

第2.乙の罪責

1.乙の不作為につき暴行罪の共同正犯(60条、208条)が成立しないか問題となるも、甲乙間で意思連絡はなく、成立しない。では、乙の不作為につき暴行罪の幇助犯が成立しないか。

(1)この点、乙はAとなんら関係がなく、先行行為も保護の引き受けもないから作為義務がない以上、不作為に実行行為性は認められない。よって成立しない。

2.Aを追跡し、乙がAを捕まえて甲と2人でAの身体をつかんで、乙の車のトランク内に無理矢理押し込んだ行為につき監禁致死罪の共同正犯(60条、221条)が成立しないか。

(1)共同正犯の処罰根拠は、共犯者の行為を介して結果へと因果性を及ぼし結果を共同惹起する点にある。よって、「共同して犯罪を実行した」とは①共謀、②①に基づく実行行為をいう。①共謀とはⅰ意思連絡、ⅱ正犯意思があれば認められる。

(2)本件で甲と乙は言葉による意思連絡はないが、乙は上記行為時点において、甲に協力しようという気持ちになって一緒にAを追跡しているから、甲乙間に黙示の意思連絡が認められる(ⅰ充足)。乙は、甲に協力する意思を有しているし、Aを捕まえるという重要な役割も果たしているから、正犯意思が認められる(ⅱ充足)。よって、共謀が認められる(①充足)。かかる共謀に基づいて甲乙は上記行為に及んでいる。上記行為は甲の罪責検討で論じた通り監禁致死罪の構成要件を充たす。したがって、共謀に基づく監禁致死罪の実行行為が認められる(②充足)。

(3)以上より、上記行為につき監禁致死罪の共同正犯が成立する。

第3.丙の罪責

1.丙の、乙の車の後部に追突した行為につき過失運転致死罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)が成立しないか。

(1)丙には、前方不注意が認められ「自動車運転上必要な注意を怠り」といえる。

(2)かかる不注意に「よって」Aは頭部挫傷の傷害を負い死亡結果が発生している。

(3)以上より、上記行為につき過失運転致死罪が成立する。

第4.Gの罪責

1.Gのにつき殺人罪(199条)が成立しないか。

(1)Aは脳死状態であり、Aの臓器を提供する意思はA本人にもその家族にもなかった(臓器移植法6条参照)。よって、上記行為は正当行為(35条)にあたり違法性阻却される。

(2)よって、犯罪は成立しない。

第5.関連設例①

1.丙の酒に酔った状態で運転し乙の車に追突した行為につき危険運転致死罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条1号)が成立しないか。

(1)乙は酒に酔って正常な運転ができない状態で車を運転していたから、「アルコール…の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行」させたといえる。

(2)かかる運転に「よって」乙の車に追突し、Aの死亡結果が生じている。

(3)以上より、上記行為につき危険運転致死罪が成立する。

第6.関連設例②

1. 本件Aを後部座席に乗せた行為に監禁致死罪が成立するか。

(1)まず、「監禁」とは上記をいうところ、本件のように後部座席に乗せる行為であってもAの身体活動の自由が奪われているから「監禁」といえる。そして、A死亡結果発生も認められる。

(2)もっとも、Aが自動車の後部座席に乗っていて事故にあった場合には、実行行為のもつA死亡結果発生の現実的危険性が現実化したとは言えず、因果関係が認められないのではないか。因果関係につき上記規範に従い検討する。

 後部座席と言うのは通常人が乗ることが予定されている場所であり、後部座席に乗ること自体にはAが脳挫傷等により死亡する現実的危険性が認められない。よって、実行行為の持つ危険性が結果へと現実化したといえないため、因果関係が認められない。

(3)以上より、上記行為につき単に監禁罪が成立し、本問と同様に考えて甲乙は監禁罪の共同正犯の罪責を負うことになる。

2.丙の衝突行為については本問と同様に過失運転致死罪が成立する。

第7.関連設例③前段

1.設問記載の場合、Gの人工呼吸器を取り外す行為に殺人罪が成立しないか。

(1)本件でFがAの事前の意思だといってGに人工呼吸器を取り外すことを求めている。この点、Aの事前の意思かは明らかではないし、人工呼吸器を取り外すべきではなかった。

(2)よって、上記行為につき殺人罪が成立する。

第8.関連設例③後段

1.Gの筋弛緩剤を注射した行為につき殺人罪は成立しないか。

(1)筋弛緩剤を注射する行為はA死亡結果発生の現実的危険性を有するため実行行為性が認められる。かかる実行行為に「よって」A死亡結果が発生している。

(2)確かに、GはAが苦しそうな呼吸を続けていることから上記行為に及んでいるが、上記客観的構成要件該当事実につき認識しており故意がある。

(3)以上より、上記行為につき殺人罪が成立する。

 

 

 

コメント

第1.甲の罪責

+Gの余命措置の中止行為

Aの脳死、そして脳死状態から回復が見込めないことによる治療中止へとつながり市の結果を誘発

呼吸器を取り外した行為は式を早めたに過ぎないので因果関係遮断されない

第2.乙の罪責

致死結果について責任を負うか問題になる?

第4.Gの罪責

脳死状態では死亡していないから∵死亡とは①心臓の停止、②呼吸の停止、③瞳孔反射の停止のいずれかの不可逆的停止

不作為

推定的承諾

第5.①

甲乙の罪の因果関係否定しない

第7.③前段

推定的承諾がある→殺人罪成立しない

第8.③後段

推定的承諾がある→殺人罪成立しない