lawlawlawko’s blog

答案をアップしていきます #司法試験

慶應ロー2014商法

第1.設問1について

1.平成25年7月1日に開催された甲取締役会の決議は有効か。

(1)本件取締役会には取締役ABCのうち「過半数」のABが出席し、両者が賛成しているから「過半数」の賛成があるといえ、有効であるようにも思われる(会社法(以下略)369条1項)。

(2)もっとも、取締役会を招集する者は、各取締役に対して招集通知を発しなければならない(368条1項)のに、本件でAは社外取締役Cに招集通知を発していなかったため368条1項に違反している。これにより、本件役会決議は無効とならないか。

ア.368条1項の趣旨は、取締役に出席の機会を与え議論を尽くさせることにあり、もって適切かつ公正な取締役会の采井を図る点にあるところ、招集通知の瑕疵はその機会を奪うことになるから、招集通知漏れがあった場合、原則としてその取締役会決議は無効となる。もっとも、例外的に①その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるとき又は②通知はなかったものの、その取締役が出席しかつ意義を述べなかったときのような特段の事情があるときには有効となる。

イ.本件において、Cに対する招集通知を欠くという瑕疵があるから、役会決議は原則として無効である。もっとも、Cが上記決議に参加していたとしても、ABが賛成すれば「過半数」の賛成により決議が可決されるから、決議の結果に影響がないといえるようにも思える。しかし、Cは社外取締役(2条15号)であるため、会社外部からの客観的な視点で意見を述べることができるところ、かかるCの意見を聞けば、事業譲渡に特に意向を示していなかったBが反対に転じた可能性も十分に考えらえる。よって、Cが参加していれば、Bが反対に転じBC「過半数」の反対で決議が否決された可能性もある以上、決議に影響がないとはいいきれないから、例外的に有効ということができない。

(3)以上より、本件役会決議は原則通り無効となる。

第2.設問2について

1.平成25年7月16日に開催された甲社株主総会の決議は取り消され(831条1項1号)、遡及的に無効(839条参照)とならないか。

(1)Cという「株主等」(831条1項柱書厳談)は甲社という「株式会社」(834条17号)に対し、「決議の日から3箇月以内」(831条1項柱書前段)つまり平成25年10月16日までに適法に取消の訴えを提起でき、訴訟要件を充たす。

2.では、本件総会決議は「招集の手続」又は「決議の方法」が「法令」に「違反」するとして取り消すことができるか(831条1項1号)。

(1)甲社は「取締役会設置会社」(298条4項、2条7項)である。鳥島入り役会設置会社が「株主総会を招集する場合」(298条1項柱書)には、「株主総会の目的である事項」(298条1項2号)を「取締役会の決議」(同条4項)で決めなければならない。また、309条5項は、取締役会設置会社株主総会では、298条1項2号の事項以外の事項を決議できないと定めている。しかし、本件株主雄会決議につき、上記のように「取締役会の決議」が無効であるから、これらの規定に反している。よって「招集の手続」が298条4項、「決議の方法」が309条5項という「法令」に「違反」しているといえる。

(2)もっとも、裁量棄却(831条2項)されないか。

ア.裁量棄却の趣旨は株主総会取消権の濫用的行為の防止にあるところ、条文上「違反する事実が重大でなく」「決議に影響を及ぼさない」と要件を並列にしていることからして要件は厳格に考えるべきである。そこで、「違反する事実が重大でなく」とは裁量棄却が要件を取り上げるに値しない些細な瑕疵であって、それを問題にすることが権利濫用に近いと認められるような場合を指すと考える。

イ.298条4項、309条5項の趣旨は株主総会の適正化を図り、取締役会による迅速かつ適切な会社運営を可能にする点にある。かかる趣旨に鑑みれば、係る規定に違反することは、株主の適切な意思反映を害する者であり、取り上げるに値しない軽微な瑕疵とは言えず、「重大でなく」とはいえない。よって、裁量棄却は認められない。

ウ.したがって、298条4項、309条5項違反により、本件株主総会決議を取り消すことができる。

(3)次に、株主総会を招集するには株主に対してその通知を発しなければならない(299条1項)のに、本件でCに対する招集通知を欠いている。よって、「招集の手続」が299条1項という「法令」に「違反」しているといえる。

ア.もっとも、裁量棄却されないか。

イ.「重大でなく」とは上記をいうところ、299条1項の趣旨は、株主に出席の機会を与えること及び準備の機会を与える点にある。株主総会が株主の意思を反映する場であることからすれば、株主にとっては総会への出席の機会とそれに先立つ準備の機会が保証されていることは重要な権利利益である。よって、299条1項に違反することは株主の意思反映を害するものであり、取り上げるに値しない軽微な瑕疵といえず、「重大でなく」とはいえない。よって、裁量棄却は認められない。

ウ.したがって、299条1項違反により、本件株主総会決議を取り消すことができる。

(4)以上より、本件株主総会決議は無効である。