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答案をアップしていきます #司法試験

刑法事例演習教材12赤いレンガの衝撃

 

 

1.甲の、Aの顔面を突いた行為につき傷害致死罪(刑法(以下略)205条)が成立しないか。

(1)結果的加重犯は基本犯の構成要件を充たせば成立する。傷害は暴行の結果的加重犯も含む。上記行為は人Aの身体たる顔面に対する突くという不法な有形力行使であり暴行にあたる。そして、A死亡結果が発生している。

(2)因果関係は条件関係を前提に実行行為の持つ現実的危険性が結果へと現実化した場合に認められる。

 上記行為は、身長約170センチメートルと高く、体重約78キログラムのがっしりした体格の甲が、身長こそ約177センチメートルあった者の、胃腸に持病をかかえているうえ、体重が約50キログラムしかないAの、脳などデリケートな臓器を有する頭部にある顔面を殴打する行為であり、Aの脳挫傷等による死亡結果発生の危険性を有していた。仮に殴打行為自体により傷害を負わなかったとしても、スナックのような狭い場所でかかる行為を行えば、壁や床等に後頭部をうちつけ打撲を負い、Aの脳挫傷による死亡結果発生の危険性があったといえる。そして、実際にAは後頭部打撲による対外損傷による硬膜下血腫を伴う左前頭葉脳挫傷を死因として死んでいる。よって、実行行為のもつ現実的危険性がA死亡結果へと現実化したといえ、因果関係が認められる。

(3)以上より、上記行為につき傷害致死罪が成立する。

2.もっとも、甲は、Aが甲の顔面を殴打しようとした行為に対する防衛行為として上記行為に及んでいるところ正当防衛(36条1項)により違法性阻却されないか。

(1)「急迫」とは法益侵害が現に存在し又は間近に押し迫っていることをいう。Aは甲の顔面を殴打しようとしており、甲の身体に対する侵害が現に存在していたため「急迫」といえる。「不正」とは違法なことをいうところ、殴打する行為は暴行であり違法であり「不正」といえる。

(2)防衛意思とは、急迫不正の侵害を認識しつつこれを避けようとする単純な心理状態をいう。攻撃意思を有していたとしても当然に防衛意思が否定されるのではなく、専ら攻撃の意思で行為に及んだというような積極的加害意思がない限り防衛意思は認められる。

 甲はAが殴りかかってきた際に「こんな奴に殴られてたまるか」と憤激している。もっとも、この機会に乗じてAに加害しようという意思は有していなかったものと考えられる。甲はAの主権をかわしつつ、左拳を強く突き出して上記行為に及んでいる以上、急迫不正の侵害を認識しつつこれを避けようとする意思が認められ、防衛意思が認められる。

(3)「やむを得ずにした」とは防衛行為が必要最小限度であったことをいう。具体的には防衛行為が攻撃行為に比して相当性を有することをいう。

 本件攻撃行為は、上記のとおり身長こそ約177センチメートルあった者の、胃腸に持病をかかえているうえ、体重が約50キログラムしかないAが甲の顔面を殴打しようとする行為であった。これに対し、防衛行為は上記の通り身長約170センチメートルと高く、体重約78キログラムのがっしりした体格甲が狭いスナック出入り口付近で上記小柄なAの顔面という脳などデリケートな臓器を有する頭部にある顔面を殴打する行為であった。係る場合、防衛行為は攻撃行為に比して相当であったとは言えず、「やむを得ずにした」といえない。

(4)以上より、正当防衛は成立しない。もっとも、相当性以外の全ての要件を充たしているので過剰防衛が成立し、36条2項より刑が任意的に減免されうると思える。

 

 

 

 

 

00:31:33.495

 

自招侵害は「急迫」のところで書くべきだった

自招侵害の記述がいまいち

Bに対する傷害罪の検討をしていない