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刑法事例演習教材3ヒモ生活の果てに

第1.甲の罪責

1.甲の人Bの身体たる顔や手足を手拳や平手で週数度叩く行為につき、人の身体に対する不法な有形力行使であり「暴行」にあたることから暴行罪(刑法(以下略)208条)が成立する。

2.甲の、Bの頭部右側を手拳あるいは裏拳で断続的に5回にわたり殴打した行為につき、傷害致死罪(205条)が成立しないか。

(1)結果的加重犯は基本犯の構成要件を充たせば成立する。傷害には暴行の結果的加重犯も含まれる。本件殴打行為は、人Bの身体たる頭部に対する殴打という不法な有形力行使であり「暴行」にあたる。そして、本件で、Bの死亡結果が生じている。

(2)もっとも、本件では、上記暴行後、Bを病院に連れて行かないという不作為が介在している。因果関係は認められるか。

ア.因果関係は条件関係を前提に、実行行為の持つ結果発生の危険性が結果へと現実化した場合に認められる。

イ.本件実行行為は、Bの脳などのデリケートな臓器を有する頭部を手拳あるいは裏拳で断続的に5回という多数に渡り殴打する行為であり、Bが硬膜下出血、くも膜下出血等の障害により死亡する現実的危険性を有していた。そして、実際にBは硬膜下出血、くも膜下出血等の障害により死亡している。不作為行為が介在しているが、本件実行行為により死因が形成されている以上、かかる不作為はBの死亡時期を早めたに過ぎないといえる。したがって、実行行為の持つB死亡結果発生の危険が現実化したといえ、因果関係が認められる。

(3)故意(38条1項本文)とは、客観的構成要件該当事実の認識認容をいうところ、甲は上記客観的構成要件該当事実につき認識しており故意がある。

(4)以上より、上記行為につき傷害致死罪が成立する。

2.甲の、Bを病院に連れて行かなかった不作為につき殺人罪(199条)が成立しないか。199条は「人を殺した」と規定し、不作為による殺人を想定していないが、不作為であっても殺人罪の実行行為が認められるか。

(1)不作為であっても、死亡結果を発生させることができる以上は、殺人罪の実行行為性が認められると考える。もっとも、いかなる不作為にも実行行為性が認められるとするのは妥当でない。そこで、①作為義務があり、②作為が可能かつ容易であった場合には不作為の実行行為性が認められると考える。

(2)甲は、Bの母親であり、Bに対する監護義務を負っていた。また、同居する乙にBを病院に連れて行ったほうがいいのではないかと言われると、「Bはちょっと気を失っただけだから大丈夫」、「私にまかせておいて」などと発言しており、先行行為及び保護の引き受けも認められる。したがって、作為義務があったといえる(①充足)。また、甲は、Bを病院に連れて行くか、救急車を呼ぶだけでよかったのであり、通信機器が広く普及している現在においては、甲は自身のスマートフォン等で119番通報することは可能であったし、数秒でできるほどに容易であったといえる。よって、作為は可能かつ容易といえる(②充足)。よって、本件不作為に実行行為性が認められる。

 そして、本件でB死亡結果が生じている。

(3)不作為の因果関係は、期待された作為を行っていれば結果発生を回避できたことが合理的疑いを超える程度に確実であった場合に認められる。

 本件で、甲がBへの傷害からすぐに病院に連れて行って治療を受けさせていれば、あbの救命は確実であったというのだから、甲が上記作為を行っていれば、B死亡結果発生を回避することは合理的疑いを超える程度に確実であったといえ、因果関係が認められる。

(4)故意とは上記をいい、甲はBを病院に連れて行って治療が受けさせなければBの命が危ないと思ったというのであるから、上記客観的構成要件該当事実を認識している。また、甲はBが上記暴行により意識を失った後、このままBが死亡してしまえば、乙との関係もうまくいくと考えており、未必の殺意があったといえる。よって、故意も認められる。

(5)以上より、上記不作為につき殺人罪が成立する。

3.以上より、甲の行為につき、暴行罪、傷害致死罪、殺人罪が成立する。

第2.乙の罪責について

1.乙の、Bを病院に連れて行かないことに同意し、自分の部屋に行ってBを放っておいた不作為につき殺人罪が成立しないか。

(1)不作為の実行行為性につき上記規範に従い検討する。

 乙は、甲と、Bに対して監護義務を負っているため、作為義務が認められる(①充足)。また、甲と同様に乙もスマートフォンなどで119番通報することは可能かつ容易であった。さらに、甲乙の住居から車で10分程度の場所に総合病院があり、乙の車でBを連れて行くことができたし、容易であったといえる。よって、作為の可能性容易性が認められる(②充足)。よって、本件不作為に実行行為性が認められる。

 そして、本件でB死亡結果が生じている。

(2)不作為の因果関係は上記をいう。上記の通り、傷害後すぐBを病院に連れて行っていれば、Bの救命は確実で会ったのであるから、乙が車でBを病院に連れて行くか、119番通報していればB死亡結果を回避することが合理的疑いを超える程度に確実であったといえ、因果関係が認められる。

(3)乙は、Bは死ぬほどの状態ではないだろうと思っていたが、故意が認められるか。

 故意とは上記をいう。乙は上記客観的構成要件該当事実につき認識しており故意がある。

(4)以上より、上記行為につき

第3.関連設例

1.設問記載の場合に、甲乙不作為とB死亡結果との間に因果関係は認められるか。

(1)不作為の因果関係は上記である。本件で、甲乙が期待された作為を行っていれば、Bの救命は相当程度可能であったが、十中八九確実であったとまではいえない。よって、作為を行っていれば、B死亡結果回避が合理的疑いを超える程度に確実とまではいえないから因果関係が認められない。

(2)以上より、かかるばあいには甲乙の不作為に殺人罪は成立しない。

以上

00:40:51.237

 

コメント

1.いらない?

2.監護義務→民法818条1項、820条

4歳への暴行が先行行為

傷害致死罪及び殺人罪が成立し、前者は後者に吸収される(包括一罪)

1.傷害致死幇助罪

乙が言い出して乙甲Bで同棲していた

乙が言えば甲はBへの暴行をやめた可能性が高い

保護責任者遺棄致死幇助罪

傷害致死幇助罪及び保護責任者遺棄致死罪が成立し、前者は後者に吸収される