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旧司昭和60年度第1問憲法

第1.設問1

1.Xとしては、外国からの輸入を規制しその生産物の価格の安定を図る法律(以下、本件法律)はXのような者のその生産物を原料として商品を製造する自由(憲法22条1項)を侵害し違憲であると主張する。

(1)「職業」とは、自己の生計維持のための継続的活動及び分業社会における社会的機能分担の活動であって、人格的価値と不可分である。

 Xのような者は、輸入生産物を商品として製造することを継続的に行って生計を維持し、それは社会的機能分担の活動であって、人格的価値と不可分であるといえるから、「職業」にあたる。

(2)憲法22条1項は職業選択の自由を保障している。この点、選択した職業の遂行の自由すなわちその職業活動の内容、態様においても原則として自由であることが要請されるのであり、憲法22条1項は営業の自由の保障を包含していると考える。

 上記自由は、Xのような者が上記職業活動の内容となる行為であり、営業の自由として憲法22条1項の保障を受ける。

(3)本件法律により、外国からの輸入を規制されることにより、その生産物を外国から自由に安く輸入できず、コスト高による収益の著しい低下を招き得ることから、上記自由に対する制約が認められる。

(5)よって、目的が重要で、手段が目的との関係で実質的関連性を有するといえなければ違憲であると考える。

ア.本件目的は外国からの輸入を規制し、その生産物の価格の安定を図る措置を講ずることで国際競争力の弱いある産業を保護しその健全な発展を図る点にある。価格の安定を図るには政府が価格設定に介入するよりも、市場原理にゆだねた方が効率的に経済活動を促すことができるため、目的が重要とは言えない。

(6)以上より、本件法律は憲法22条1項に反し違憲である。

第2.設問2

1.被告としては、以下の通り反論しうる。

(1)まず、Xのような者は、その生産物を輸入することを禁じられるわけではないから、上記自由に対する制約が認められない。

(2)仮に認められるとしても、輸入を禁じられるわけでないから制約の強度も弱い。また、職業の多様性に応じて規制態様も多様であることから立法裁量が認められる。この点、本件目的は上記であり積極目的規制であることから、裁量は広いといえる。

(3)よって、目的が正当で、手段が目的との間で合理的関連性を有すれば合憲となる。

ア.本件目的は、上記であるところ、国際的競争力のある弱い産業を保護することは、社会経済政策の一つといえ正当である。手段については、外国からの輸入を規制すれば、その生産物の価格の安定を期待できることから、上記目的との関係で合理的関連性を有する。

(4)以上より、本件法律は合憲であると主張する。

2.以下、私見を述べる。

(1)上記自由に対する制約について、Xのような者はその生産物を輸入することを禁じられるわけではなく、その生産物を国内産の者に代えれば、変わらず、その生産物を原料として商品を製造することができる。したがって、被告の反論が妥当し、制約は認められないと考える。

(2)仮に認められるとしても、国内産のその生産物を使えば商品の製造を続けられることから制約の態様は弱いといえる。

また、職業の多様性に応じて規制態様も多様であることから立法裁量が認められる。よって、憲法上是認されるかどうかは、職業の自由の性質、制限の程度等を比較考量したうえで決すべきである。もっとも、事の性質上立法裁量にはおのずから広狭がある。

 事の性質について、本件法律の目的は、国際競争力の弱いある産業を保護しその健全な発展を図るという積極目的規制であるところ、かかる目的を達成する方法は複数考えられるため、どの手段が最適であるかの判断は困難である。したがって、裁量は広いといえる。

(3)よって、目的が正当で手段が目的との関係で合理的関連性を有しない限り違憲であると考える。

ア.本件目的は上記であるところ、国際競争力の弱いある産業を保護することは、社会経済政策の一つとして認められ、正当といえる。

 手段について、外国からの輸入を規制することで、おのずとその生産物の価格は安定することが期待されるから、上記目的との関係で合理的関連性を有する。

(4)以上より、本件法律は合憲であると考える。

 

1hくらい