lawlawlawko’s blog

答案をアップしていきます #司法試験

旧司平成11年度第2問民訴

第1.前提

1.前提として、本件訴訟物はどの範囲か。

(1)処分権主義(民事訴訟法(以下略)246条参照)の趣旨は、審判対象の確定を当事者に委ねることで当事者意思を尊重する点にあり、この趣旨から一部請求は問題なく認められる。また、訴訟物の範囲については、かかる趣旨及び不意打ち防止の機能から、一部請求であることが明示されていれば不意打ちとならないことから、明示された一部の範囲で訴訟物となる。

(2)本件で、甲は一部請求であることを明示して1000万円の支払いを求めていることから、訴訟物は1000万円の範囲で認められる。

第2,設問1

1.当事者は過失相殺をすべきであるとの主張をしていないが、裁判所が過失相殺を認定することは弁論主義に反しないか。

(1)過失相殺の制度趣旨は損害の公平な分担であるところ、過失相殺の権利主張まで要求することは、損害の公平な分担の硬直化をきたしうるため妥当でない。そのため、私的自治の訴訟的反映を趣旨とする弁論主義は適用されないように思える。もっとも、損害賠償額の減少という権利義務への影響を伴うことに鑑みれば、弁論主義の下一定の不意打ち防止は全うしなければならない。よって、過失相殺に権利主張までは必要でない。しかし、裁判所の主張していない事実を判決の基礎とできないという弁論主義第1テーゼより、過失につき事実主張を要し、その範囲で弁論主義が適用される。

(2)本件で、乙は、甲の行為が損害の発生につながったとの主張をしており、過失を認定するための事実を主張している。よって、この範囲で弁論主義が適用される。もっとも、弁論主義は主要事実につき適用されるところ、過失における主要事実とは何か。

ア.過失のような規範的要件であっても、具体的事実によって構成されている。そのため、規範的要件における主要事実は、その要件を基礎づける具体的事実をいうと考える。

イ.乙の、甲の行為が損害の発生につながったとの主張は、過失を基礎づける具体的事実といえるから、主要事実であり、弁論主義が適用される。

(3)よって、裁判所は、甲4割、乙6割の過失割合で過失相殺を認定することが認められる。

2.もっとも、本件請求は一部請求であるが、過失相殺はどの範囲を基準にして行うべきか。

(1)損害額全体を基準として相殺すべきである(外側説)。これにより、原告が残部を期待して請求することを防ぐことができる。

(2)本件では、損害額全体の1500万円を基準に本件過失相殺を行い、乙は甲に900万円を支払えと判決できると考える。

3.もっとも、本件で甲は1000万円の支払いを求めているのに900万円の支払いを求める判決をすることは、「申し立てていない事項」(246条)についての判決にあたらないか。

(1)246条の不意打ち防止の機能から、一部認容判決は①原告の合理的意思に合致し、②被告の不意打ちとならない場合には認められる。

(2)本件で、甲としては、請求が全部棄却されるよりは900万円でも認容判決を得た方が利益となるから、原告の合理的意思に合致する(①充足)。また、被告は1000万円の支払いを覚悟していたのであるから、より少額の900万円の支払いを求めても不意打ちとならない(②充足)。よって、246条に反しない。

(3)以上より、裁判所は、900万円の支払いを求める判決をすべきである。

第3.設問2

1,乙は甲の過失に関するいかなる主張もしていないのに、過失相殺を認定することは弁論主義に反しないか。

(1)設問1で述べた通り、弁論主義第1テーゼより、過失につき事実主張を要し、その範囲で弁論主義が適用される。

(2)本件では、過失につき事実主張がない以上、過失を認定すれば当事者の不意打ちとなり、弁論主義に反する。

(3)以上より、裁判所は過失相殺を認定することができず、甲の請求を全部認容判決すべきである。

以上

00:31:19.937

 

+法的観点私的義務